洗車や作業後の手洗いなど、テクノショップから排出される排水には、油分が含まれております。環境に影響を与える油分を敷地外に流出させないよう、テクノショップには必ず油水分離槽を設置し、日常点検と定期的な清掃を行います。なお、洗剤の使用は、油分が流出する恐れがあるため、使用洗剤の種類や量について注意が必要です。 自動車分解整備事業の屋内作業場総面積が800㎡を超える場合や、自動式車両洗浄施設(門型洗車機)など、水質汚濁防止法の特定施設を有する場合には、油水分離槽の設置が義務付けられています。 水質汚濁防止法 設備選定のポイント 油水分離槽は、4槽以上のタイプを推奨します。材質はコンクリート製、FRP製などがあります。 油水分離槽の大きさは、以下の計算方法に基づいて算出した排水量と日本下水道協会の規則により義務づけられた滞留時間※を考慮し、必要容量を確保した設備を選定します。 ※各市町村にご確認ください。 必要容量の計算方法 必要容量は、テクノショップの各設備・機器から排出される1時間当たりの排水量の合計×滞留時間で算出します。 算出例(滞留時間2時間の場合) 排水元 1回当たりの排水量(L) 1時間当たりの使用回数(回) 1時間当たりの排水量(L) 1時間当たりの排水量合計(L) ストール手洗設備 10 6 (3設備×2回/H) 60 820 手洗洗車 160 1 160 門型洗車機 60 10 600 必要容量:820L×2H=1,640L ⇒1,640L以上の処理能力を備えた油水分離槽の選定が必要 排水処理フロー 排水は、整備作業に伴う油分を含む排水と、雨水や生活排水などの油分を含まない排水に分けることができ、それぞれの水質基準や必要な設備も異なるため、以下のフロー図を参考に最適な排水処理設備を設けます。 水質汚濁防止法 ※1:土砂の多い排水経路には、油水分離槽までの間に泥溜桝を設置 ※2:公共下水道に接続できない場合は設置 ※3:敷地外に出る前の最終チェックのため設置 油水分離槽 構造・設置のポイント 機能低下防止のため、以下の項目に留意します。
※旧版のファシリティーガイドの参考プランAの事例です。 地中配管は経路を分かりやすくするためのイメージです。 ❶ 日常点検や清掃を考慮し、小窓蓋を設けるなど蓋は開けやすい構造とします。 ❷ 降雨などにより蓋が冠水しても、隙間から雨水が直接浸入しない構造とします。 ❸ 雨水が流入しないよう、排水経路は分けて設置します。 ❹ 油水分離槽の損傷を防止するため、極力車両が通らない場所に設置します。 処理方式 油水分離槽の処理方式には、「ピットホール式」と「フィルター式」の2種類があります。 それぞれの方式のメリット・デメリット、メンテナンスのしやすさなどを考慮し、排水量に応じた設備を選定します。 項目 ピットホール式(大中規模店舗向き) フィルター式(小規模店舗向き) 断面図 特徴 油水を幾つかの槽にくぐらせることで、油と水を分離処理する。 ○ フィルターなどの消耗部品がないため、 ランニングコストが低い○ ピットホールが着脱式で、外して清掃する ことが可能なため、清掃性がよい✕ 砂や泥などの沈殿物が溜まりピットホール をふさいでしまうため、清掃頻度が高い 油分をフィルターに吸着させることで、油と水を分離処理する。 ○ ユニットタイプで設置が簡単、イニシャル コストが低い○ 油分はフィルターに吸着するので、浮上油 を取り除く手間が減り、清掃性がよい✕ フィルター交換タイプの場合、ランニング コストが高い 清掃頻度※ 一槽目の日常点検および清掃 1回/日 1回/日 槽内の油分除去 1回/週 1回/週 フィルターの清掃/交換 − 1回/2週間〜1ヶ月 槽内の清掃 1回/3〜6ヶ月 1回/3〜6ヶ月 ※清掃頻度は目安であり機種や清掃条件などによって異なりますので、各メーカーの指示に従い適切な保守・管理を行ってください。 油水分離槽 テクノショップの出入口や洗車場/拭き取り場には、油水などが屋外へ流出しないよう、排水溝を設けます。 テクノショップや洗車場/拭き取り場の床面は、敷地より0.1~0.2m程度のレベル差を設け、雨水などの浸入を防止します。 紹介設備 設置場所 グレーチング(イメージ) 設備選定のポイント テクノショップ 出入口・中通路 雨水の流入防止のため、屋根のある場所に設置 幅広タイプ(300mm程度)を選定 勾配を排水の流れ方向に1/100程度つける グレーチングは、車両の通行を考慮し、表面すべり止め加工を施したボルト締めタイプを推奨 中型車の通行も考慮し、グレーチングは、重荷重用(T-14、T-20)を選定 洗車場・拭き取り場 ストール周り ストールの周りを囲むように、「ロの字」型に配置 幅狭タイプ(120〜150mm程度)を選定 勾配を排水の流れ方向に1/100程度つける グレーチングは、車両の通行を考慮し、ボルト締めタイプを推奨 設備や機器類のキャスターが落ち込まないよう、グレーチングの目は20mm以下を推奨 地域によってはテクノショップ内に持ち込まれる水・土砂の量に差がありますので、地域特性を考慮し排水量に応じた適切な排水溝の容量を確保してください。 プラスONE提案 緊急時にすぐに対応できるように、最終桝に続くバルブ位置を分かり易くする工夫をしている事例もあります。 関連法規 【水質汚濁防止法】【下水道法】 工場からの排水には、「水質汚濁防止法」、「下水道法」、「各市区町村条例」などが適用されます。 水質基準については、管轄する市区町村に事前確認を行ってください。 なお、特定施設(自動式車両洗浄施設など)を設置する場合は、届出が必要となります。 水質汚濁防止法下水道法 【事業場排水指導指針】(日本下水道協会)対象:油水分離槽 鉱物系の自然浮上分離方式の油水分離槽では、下水の滞留時間は一般的に2時間以上を推奨しています。